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Intelligence Scienceの歴史をご紹介いたします。
「論理」は思考の根幹と考えられています。3段論法をはじめアリストテレスの「論理」は、人工知能を実現する上で大変重要な考え方の一つとなっています。
「論理」は人工知能を実現する上で重要な考え方の一つとなっています。アリストテレスの3段論法とは「鳥は空を飛ぶ。フィンチは鳥である。だからフィンチは空を飛ぶ」というような、知っている知識から新しい知識を導きだす方法(推論)のことです。
3段論法は簡単なようで意外と間違いを犯しやすい方法でもあります。人間がどのような間違いを犯しやすいのかは今も活発に研究されているテーマです。ところで、最初のフィンチについての推論の例ですが、これも一見問題がなさそうで実は正しくない推論です。
フィンチをペンギンに変えてみたらどうなるでしょうか?ペンギンは空を飛びませんよね。現実には全ての鳥が飛ぶわけではないので、「鳥は空を飛ぶ」というのが正確ではありません。でもいつも成り立つ知識というものはなかなかあるものではありません。何にでもいつも例外というものが存在します。こういった例外をうまく扱うための推論も研究されています(非単調推論と言います)。
もう少し踏み込んで、「鳥」とはなんでしょうか?普通は「空を飛ぶ動物」くらいに考えますが、ペンギンは空を飛ばないし、コウモリは空を飛ぶけど鳥ではないので、鳥が何かを正確に定義することも実は簡単ではないとわかるでしょう。これは「鳥」という種類に分類される動物だけに共通している特徴(内包といいます)というものがないからです。
こういうつかみ所のない「種類」を「家族的類似(みんな似てるけどみんな違う、ということ)」といいますが、近代の哲学者(ウィトゲンシュタイン)などによって指摘されるまでは問題とも思われていませんでした。しかしこういった一見些細な問題が、人工知能を実現する上で大きな壁になることが研究者たちによって明らかにされました。このように論理は2000年以上前から研究されていますが、まだ発展の途上にあります。
ブールは論理的な計算を行うための理論を構築しました。ブール代数を利用することで、現代のデジタル・コンピュータを設計することができるようになりました。
ブールは論理的な計算を行うための理論を構築しました。ブール代数、あるいはブール論理は、ある知識が正しいことを1、正しくないことを0で表し、知識の組み合わせで新しい知識を表現します。そして組み合わせで得た知識が正しい知識となるのか間違った知識となるのかを計算することを可能にします。ブール代数の1と0をスイッチのオンとオフに対応させることで、現代のデジタル・コンピュータを設計することができるようになりました。
人が心の中で感じる様々な感覚の「強さ」を、感覚の元になった刺激の物理的な強さに対応させて測定できることを示しました。
人が心の中で感じる様々な感覚の「強さ」を、感覚の元になった刺激の物理的な強さに対応させて測定できることを示しました。これにより人間の精神の様々な活動を客観的に記述することが可能になり、「心」が科学の対象となりました。フェヒナーが測定方法を示すまで観察対象を客観的に測定できなかった心理学は、哲学者のカントなどから「科学にはならない」と言われていました。彼の提案した測定方法は現在でも心理学や神経科学など様々な研究の場で使われています。
哲学者パースによって、それまで広く知られていた演鐸(デダクション)と帰納(インダクション)に続く第3の重要な推論方法としてアブダクションが提唱されました。
部屋の窓の外に木が見えます。その木が大きく揺れているのを見て皆さんは何を思いますか?きっと風が吹いているのだと思うのではないでしょうか?このように結果からもっともらしい原因を推論することをアブダクションといいます。アブダクションによって導かれる結論は間違っていることもあります(さっきの木はもしかしたら木登りをして遊ぶ子供が揺らしていたのかもしれません)が、私たち人間の知的活動には欠かせない推論です。パースは他にも記号学(言語学の更に基礎になる学問)などにも貢献しました。
「パブロフの犬」との発見によっていろいろな実験ができるようになり、心理学の発展に大きく寄与しました。
「パブロフの犬」の話を聞いたことがある人は多いと思います(ちなみにパブロフは犬の名前ではなくて、犬を飼っていた科学者の名前ですから、勘違いのないように)。パブロフが犬の唾液について研究していたときに、エサを与える人の足音がするだけで犬が唾液を出すことに気づきました。足音がすればエサをもらえることを犬がおぼえてしまったのです。とても単純なことですが、この発見は心理学(専門用語では行動主義心理学。心理学は、人間だけでなく犬や鳥も研究します)のその後の研究に大きく影響を与えました。
ゲーデルは、それまでの数学者たちが考えていた、矛盾が無く完璧で美しい「真の体系」に対して、矛盾がない体系では証明できない「不完全定理」を証明しました。
ゲーデルがこの定理を証明するまで、多くの数学者は全く矛盾が無く完璧で美しい「真の体系」というものが存在すると信じていました(数学では公理というものを変えることでいろいろな種類の数学を作ることができます。私たちが学校でならう算数・数学はそのうちの1つに過ぎません。この1つ1つの数学を「体系」とよびます。)。しかしゲーデルは矛盾がない体系では証明できない定理が必ず存在することを証明してしまいました。これは「完璧さ」を追い求めた数学者の夢を打ち砕いたと同時に、人間の知性の素晴らしさを証明しました。なぜなら、ある体系自身による機械的な計算では正しいことが証明できない定理でも、その定理が正しいことが人間には分かるからです。
このチョムスキーの批判がきっかけとなり、人の知性の仕組みの解明に取り組む認知科学という学問が発展しはじめました。
人間が使う言語は世界中に4000以上もあると言われていますが、チョムスキーはそれら全ての言語に共通する性質を説明する「生成文法」と「不偏文法」という2つの重要な概念を提案した人物です。また、生成文法の下地となっている文法の数学的な理論(これもチョムスキーが作りました)は、人間の言語(自然言語)だけでなく、コンピュータのための言語(CとかJavaとかのプログラム言語)にも重要なものです。
チョムスキーは、生成文法や不偏文法の考えを提唱するにあたり、それまで優勢だった行動主義心理学(動物を刺激に反応するだけの箱として考え、その箱の中に何があってどう動いているのかは無視する心理学(パブロフの「条件付け」を基本とした実験をします)を痛烈に批判しました。
アフォーダンスの考えは、動物や人間が世界を認識する仕組みを研究者が理解しようとするときに陥りがちな落とし穴を明らかにしました。
アフォーダンスでは「イスは、人間には座るという行為をアフォード(「与える」というような意味)する、鳥には背もたれに停まるという行為をアフォードする。」と表現します。この、イスが人間や鳥を見て何かを判断しているかのような表現がアフォーダンスを解りにくくしているのですが、このように表現することで、3段論法のような論理を元に「イスに座れる」ことを人間が判断しているという思い込み(認知科学者が考えがちな思い込み)に陥ることを防いでいます。
アフォーダンスでは、生物の体(目の構造から脳までを含む知覚系統)がそれぞれの生態(生きる場所やそこで生きる方法)に合わせて環境の中で自分が可能な行為を感じ取れるようになっているのだと考えます(「そういうふうに体ができている」ということです)。
つまり「理屈で考えているのではなく体で感じている」ということです。このアフォーダンスを中心としたギブソン流の心理学を生態心理学といいます。従来の知能研究はとかく脳や精神だけを見て体を無視しがちでしたが、この生態心理学が指摘した「知能における体と環境の重要性」は、文法だけを重視しすぎるチョムスキー言語学を批判したレイコフのメタファーの理論や、身体を持つところから出発するロボット工学流の知能研究の礎となっていきます。
レイコフは、メタファー(暗喩)は文法と同じくらい言語の根源的な要素であり、メタファーを用いる我々の知能には、我々の身体が非常に重要な役割を持つことを指摘しました。
メタファー(隠喩)とは「恋は旅路だ」のような、何かの様子や特徴を別の何かで表した表現です。レイコフ達がメタファーの重要性を指摘するまでは、メタファーは言葉遊びや目を引く文章を作るための技法として考えられており、人間知能の根幹に関わるようなものとは思われていませんでした。しかし、我々の日常の言葉を注意深く見てみると人間の言葉はメタファーに溢れており、文法と同じくらい言語の根源的な要素であることが分かってきました。
例えば「今日は気持ちが沈んでいる」という表現には、形も重さも無い「気分」を形のあるもののように捉える「ものメタファー」と、「上・下」と「良い・悪い」を対応付ける「方向メタファー」という2つのメタファーが含まれています。このようにちょっとしたことを表現するにも何気なく我々はメタファーを使っています。レイコフは、メタファーを用いる我々の知能には、我々の身体が非常に重要な役割を持つことも指摘しました。
このようにメタファーに関する言語学的な分析はレイコフを中心に進んできましたが、メタファーを駆使する人工知能をどのように実現したらよいのかはほとんど分かっていません。脳科学者のラマチャンドランは、2つの異なる感覚を繋げる「共感覚」とよばれる現象が、メタファーの仕組みの解明の鍵になるのではないかと提起しています。「音を聞くと音に対応した色が見える」といった特殊な感覚を持つ人々のこの感覚を「共感覚」というのですが、ラマチャンドランはこれほど極端ではなくても普通の人も共感覚をもっていて、それがメタファーを我々が使うことを可能にしていると考えています。
物質である脳からどのように我々の意識体験が生まれるのか、という疑問を意識のハードブロブレムとよび、その難しさと重要性を指摘しました。
脳がどのように機能するのか(外界から受けた刺激に対してどのように反応するのか)という疑問は、心理学、人工知能、大脳生理学などで中心的に研究されることですが、これらは従来の科学研究手法で取り組むことができます。しかし、我々の意識が感じたことは我々が言葉によって報告するしかありません。計測器をつかって客観的に測定することもできず、どのように研究すればよいのかもわからないため、チャーマーズはより難しい問題であると指摘しました。チャーマーズの著書を通じて、意識の問題に注意を向ける科学者が増え、「クオリア」といった言葉が一般に知られるようにもなりました。
人間の脳の中のある特定の部位(ブローカ野)が破壊されると、言語を話すことだけに障害が現れることを発見しました。
ブローカ野が傷つくと複雑な文をうまく話せなくなるのですが、他人の言葉を理解でき、その他の知的活動には支障がありません。この発見は脳機能局在性の根拠となりました。脳機能局在性とは、人間の知的活動に関わる様々な活動、例えば文章を組み立てたり、人の顔を見分けたりする活動が、脳の中の特定の部分で行われていることを意味します。他にも言葉を理解することだけに関係するウェルニッケ野などが知られています。
ラモン・イ・カハールは、脳の組織が「ニューロン」という小さな単位が折り重なっていることで1つの連続体に見えているだけだという説を唱えました。
脳が編目状の組織であることは分かっていましたが、それが実際にどういうものかは組織が小さすぎてわかっていませんでした。ゴルジ染色という方法を発明したゴルジらが唱える連続体説(編目が全て繋がっている1つの組織であるという説)に対し、ラモン・イ・カハールはニューロン説を唱えました。ゴルジとラモン・イ・カハールが同時にノーベル賞を受賞したときには、まだどちらが正しいのかは分かっていませんでしたが、後の電子顕微鏡の発明により、ニューロン説が正しいことが証明されました。
ヒューベルとウィーゼルは、猫の脳の中で視覚に関係する神経細胞の活動を観察していた際に、特定の傾きの線のみに強く反応する細胞を発見しました。
この発見後、傾きと動きに反応する細胞や、奥行き(視差)に反応する細胞などを次々に発見し、これらの発見を元に、脳の視覚に関する領域(視覚野)の構造のモデル(コラム構造モデル)を提案しました。また、脳が映像中のパターンを認識する際の情報処理のモデル(階層モデル)も提案しています。これらの発見と提案は、視覚に関する脳の研究を大きく前進させ、脳の感覚情報処理を理解する基礎となりました。
サルの脳で、自分が行動をするときにも、それと同じ行動をする他のサルを見ているときにも反応する神経細胞が発見されました。ミラーニューロンは、我々が他人の意図や気持ちを理解する能力に強く関係すると言われており、多くの研究者がミラーニューロンに関する研究に取り組んでいます。
1996年に同社が発表したロボット「P2」をより人間的に進化させた自律二足歩行ロボット「ASIMO」を発表。「P2」はいかにも研究用といった容姿でしたが、ASIMOは一般の人でも親しみやすい洗練されたデザインが施され、TV-CMや様々な催し物で今も活躍しつづけています。
脳の活動を計測するための重要なツールの1つである脳波計。装置の原型は既に先人達によって作り上げられていましたが、人間の脳波を初めて報告したベルガーによって、「EEG」という名前を与えられました。
血流動態反応を視覚化する「fMRI」によって、脳活動の活発さの場所による違いと、その時間的な変化を捉えられることが実証されました。
磁場を用いて物体の内部構造を透視できるMRIは1970年代に実用化されましたが、同じ原理を利用して脳の中の血流の変化を観測することで、脳活動の活発さの場所による違いと、その時間的な変化を捉えられることが実証されました。「EEG」や「MEG」に比べて、非常に小さな部位の活動にピンポイントで注視できるため、脳の機能の研究や心理学実験の重要なツールとなりました。ただし装置が非常に大きく高価なことがネックです。
比較的最近開発された計測装置で、近赤外線を脳に当てて脳活動の変化(ヘモグロビンの増減)を計測します。他の装置に比べて、使う場所置の制約が少ないため、利用しやすいという利点があります。
人工ニューラルネットワークの基礎となるアイデアを示しました。これは1つ1つの神経(ニューロン)を、入力された複数の数値を足し合わせてその結果に応じて出力を変える単純な装置として捉えるものです。
知能を持つ機械という概念を提唱したチューリングは、次に「作った機械が(人間並みの)知能をもっているかどうか」を判別するテストを提示しました。
チューリングテストは、『中に人がはいった小部屋と、機械がはいった小部屋を用意する。テストする人が部屋越しに会話をして、どちらの部屋に入っているのか人間が分からなければ、その時機械は知能を持ったといえる』というものです。このテストはチューリングテストと呼ばれ、今でも毎年行われるチャットシステム(おしゃべりシステム)のコンテスト(ロブナー賞)などで採用されています。
ただし、チューリングテストが「知能のテスト」として本当に十分かどうかは、研究者の間でも意見が分かれるところです。例えば哲学者サールは「中国語の部屋」とよばれる例え話を用いてチューリングテストが不完全であると主張しています。
人工知能最大の問題といわれるフレーム問題を提示しました。このフレーム問題には人工知能学者だけでなく多くの哲学者らも関心を示し、人間がどのようにフレーム問題を回避しているのか、様々な議論が行われました。フレーム問題の最終的な答えは今も得られていません。
アニメーションを作るときは、キャラクターなどの動くものと動かない背景を別々のフィルムに描き、2つを重ねて撮影することで背景を毎回描かずに済ませます。つまり描き手は一時的に背景を無視します。フレーム問題の「フレーム」はこの背景のことを指しています。
人間が行動を起こす時はいろいろなことを考える必要がありますが、明らかに全てのことを考えてはおらずその場に関わりのあることだけに(意識的に/あるいは無意識のうちに)気を配っています。例えば、コップに水を注ぐ時にコップが倒れないようには注意しても、コップがひとりでに走りださないかどうかなんて普通は考えません。
コンピュータがチェスの世界チャンピオンに初めて勝ちました。
このチェスをするコンピュータが知能をもっているといえるのかどうかは研究者の間でも意見が分かれていますが、少なくとも人間のように様々な問題を自分で解決できる人間のような知能をもっていないことは確かです。
アーサー・C・クラークが1968年に発表した有名なSF小説「2001年宇宙の旅」で、木星へ行く宇宙船に搭載された人工知能HAL9000は、1997年に生まれました(映画版では1992年)。HAL9000は会話を通じて人間の乗組員と協力して様々な問題を解決できるという設定ですが、現実の音声対話システムには3歳児程度の会話能力もないのが現状です。
藤子・F・不二雄作の同名漫画の主人公です。この漫画が発表されたのは1969年ですが、ドラえもんが生まれたのは2112年(22世紀)となっています。ドラえもんが生まれる年までにはまだ時間がありますが、あと100年でドラえもんのように子供と一緒に遊べる高い知能を持ったロボットを作れるかどうかは、これから知能研究に携わる若い研究者・学生の皆さんにかかっています。