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人工知能Q&A

人工知能についてのご質問にお答えします。

Q. 人工知能とは?

A. ”知的な”コンピュータソフトウェア(プログラム)のことです。

1. 何を指して人工知能というのですか?

「人工知能」および「知能」の定義ははっきりとは決まっていません。 ですが、厳密さには目を瞑って大雑把にいえば、人工知能とは 「人間を含む生物が行っている様々な問題解決を自動的に行えるようにしたプログラム」のことといえるでしょう。 ここでいう問題解決とは、餌を見つけること、ゲームをすることなど、いろいろなことを含み、 以下のような特徴(キーワード)に一つ以上当てはまると、「人工知能」とよばれやすくなります(あるプログラムを「人工知能」とよべるのかどうかは人によって意見が異なります)。

   [自律] 例:人の助けを借りず自分だけで部屋を掃除する

   [認識] 例:いろいろなものが写っている風景写真の中で人の顔だけを見つける

   [分類] 例:顔写真に写っている人が誰かを当てる

   [予測] 例:サッカーで、どこにボールを蹴ったらパスが通るか判断する

   [学習] 例:教えられたり試行錯誤したりして、新しいことができるようになる

   [計画] 例:夕飯までに済ませられるように買い物にいく店の順番を決める

   [推論] 例:テスト問題やクイズを解いたり、ゲームに勝つ手を見つけたりする

   [言語] 例:話しかけられるとそれを理解して適切な返事をする

   [創造] 例:新しい道具やゲームを作ったり、作曲したりする

 これらの特徴は、お互いに関連し合っています。 例えば、人のように言葉を話して社会生活を送るためには、いろいろな音が混ざった中に人の言葉を「認識」し、その意味を「分類」し、相手の意図を「推論」し、自分の返事が相手を怒らせたりしないか「予測」し、何をどう伝えていくか「計画」しなければいけませんし、そうするために多くのことを前もって「学習」しておかなければいけません。
 前述のキーワードは、下に行くほど人間に特徴的な能力になっていきます。
 推論・言語・創造といったキーワードに注目している場合は、特に「人間的な振る舞いをすること」を指して「人工知能」といっている場合が多いです。予測や学習ということを一切しない単純なプログラムでも、見かけ上人間らしさが認められれば「人工知能」とよばれます。
 逆に、予測や学習、計画に注目している場合は、人のように言葉を話したりしない、人間らしくないプログラムでも「人工知能」とよびます。「生存のための生物の適応能力」や「(ヒトに限らない)脳の仕組み」に主な関心が向けられていて、そこでは「予測」や「適応(学習)」が知能の本質であると定義されます。
 さらに認識や分類に注目している場合は、「情報処理」能力やその理論的な背景となる「数学(特に確率・統計)」に関心が向けられている傾向が強くなります。認識・分類の能力は高度で汎用的な人工知能の実現に欠かせないものですが、ここだけに焦点を当てている研究者はあまり「人工知能」というよび方をしません。

2. 何のために人工知能を研究するのですか?

 人工知能の研究から生まれる様々な技術によって、人の役にたつ、より便利な道具(製品)をつくることができます。それによって、より豊かな生活と、より幸福な社会を実現することができます。 これは工学の目的です。
 それと同時に、生物、人間、文明社会、ひいてはこの世界についてより深く知ることができます。これは科学の目的です。

3. どのような人たちが研究しているのですか?

 人工知能は、主に工学分野の研究対象です。 人工知能はコンピュータプログラムなので、特に情報工学・情報科学分野出身の研究者が多いですが、ロボットを作るために機械工学分野から関わる研究者もいます。 脳科学や心理学の研究者の中にも、脳や人の心を理解するための手段として、関わっている人たちがいます。

4. 人工知能で何ができるのですか?

 前述の「特徴」の例として挙げたようなことができるようになります。 人工知能に関する技術が発展していけば、人工知能が多くのことをできるようになり、今は人がやっている仕事をいろいろと肩代わりできるようになります。
 コンピュータは、人よりも長い時間働き続け、人よりもはるかに早く正確に計算をすることができるので、とても人の能力ではこなせないような過酷で膨大な量の仕事もこなせるようになります。


Q. 強いAI、弱いAIとはなんですか?

A.「心」を持ち「思考」する人工知能を「強いAI」といいます。


 我々のような思考能力と心を持った人工知能、あるいは心はなくても人間と同等かそれ以上の思考能力をもつ人工知能を「強いAI (Artificial Intelligence すなわち人工知能)」とよびます(注:強いAIはまだ実現していません)。そして推論・言語・創造などに関する能力を人間レベルで実現できるように、知能に関する理解とそれを実現するためのコンピュータ技術を高めていけば、いつかはそのような人工知能を実現できると考える立場を、「強いAI」の立場といいます。
 一方、前述の「特徴」の一部分だけを特定の問題に限って実現したプログラムを「弱いAI」とよびます。また「強いAI」は実現不可能であると考える立場、あるいは工学的観点からは「弱いAI」で十分であると考える立場を「弱いAI」の立場といいます。
 ひたむきに「強いAI」を目指して研究を続けている研究者もいますが、理屈の上では「強いAI」は必ず実現できると思いながらも、現在の我々の知識水準では「強いAI」の近い将来での実現は難しいと考えていたり、どうすれば「強いAI」を実現できるのかがまだはっきりわからないため、「強いAI」を実現するためのステップとして、「弱いAI」の立場で研究を続けている研究者もいます。


Q. 人間レベルの知能はできているのですか?

A. ほとんどできていません。

1. なにができれば人間レベルの知能なのですか?

 「強いAI」の立場では、人間と会話し、知らないことを言葉と経験から学習し、限られた資源(使えるコンピュータの量と時間)のなかで、新たな問題を(人並みに)自力で解決できるようになる必要があります。
 人間レベルの知能が実現されたことを確認する方法の一つとして「チューリングテスト」とよばれるものが提案されています。これは、人にコンピュータと電話やメールのやり取りで会話をさせて、その人が会話の相手がコンピュータか人間かを区別できなかったとしたら、そのコンピュータは人間レベルの知能を持っていると考えてもよいだろう、というものです。ですが、このテストでは「強いAI」が実現できたことの証明にはならないと主張する人たちもいて、研究者の意見は分かれています。
 「弱いAI」の立場からは、特定の課題・仕事に限ってでも人間と同等にこなせるようになれば、「人間レベルの知能が実現できている(ものもある)」ということができます。ですが、実際にコンピュータが人間以上にこなせることはまだほとんどありません。

2. 今の研究では、そのうちどこまでできているのですか?

 ある種のゲームやクイズ問題などは既に人間以上にこなすことができています。 チェスや雑学知識を問うクイズゲームなどでは、すでに最も強い人間にも勝つことができます。将棋もトップエベルの人間とほぼ互角の強さを達成しています。 また、大学入試センター試験の科目の多くでは、平均的な学生よりもよい成績をとることもできます。ですが、これらはすべて特定の問題解決の方法を人間にプログラムしてもらっているにすぎず、コンピュータが人間のように問題の解き方を学習したり、自分で発見したりできているわけではありません。センター試験で好成績を出すことができるとはいっても、人間でいえば、丸暗記と受験テクニックだけで点を取っている状態です。普通の学生であれば「テストで点をとることしかできない役立たず」と陰口を言われしまうでしょう(それでも「弱いAI」としては、テスト問題作成の支援などで、工学的な価値が十分あります)。
 言語・推論・創造に関する汎用的な能力は、まったく人間に及ぶ水準にはありません。 一方で、認識・分類・ある種の予測の能力については、ディープラーニング・ディープニューラルネットワークとよばれる技術的ブレイクスルーによって、近い将来に人間と同等か、人間以上の能力を実現できそうなところまで研究が進んできています。

3. 近い将来に達成できるものは何ですか?

 特定の問題に限って対処する「弱いAI」の範囲では、人間以上の能力を発揮する、工学的価値の高いものが実現できるでしょう。それは鳥を手本に作られた飛行機が、生きている鳥のような柔軟さはなくても、はるかに速いスピードで飛んだり、はるかに高いところを飛んだり、はるかに重いものを運ぶことができることと似ています。
 特に、何のためにやっているのか、それが自分にとってどういう価値を持つのか、というものごとの「意味」をコンピュータが気にしなくても(無視しても)できることについては、多くのことが実用化されるでしょう。それは「この世界で生存する」という生命の本質を持たないコンピュータの弱点でもあり、それに縛られる必要がないという強みでもあります。

Q. 人間のような知能に向けた人工知能の課題は何ですか?

A. 「表象」がまず乗り越えるべき課題でしょう。

1. どのような課題があるのですか?

 前述の言語・推論・創造に関する課題が解決できなければ、普通の人が「人間のようだ」と思うような人工知能は実現できないでしょう。
 人間の創造性がどのような仕組み(アルゴリズム)で実現されているのかはわかっていません。また、言語・推論についてもどのように実現されているのかはわかっていませんが、それ以上に、必要となる多量の知識(いわゆる常識)をどのようにすれば与えらえるのかわかっていません。現在、インターネットには膨大な情報が溢れているといわれますが、人々が成長の過程で体験し獲得する様々な知識の種類と量に比べれば、とても「偏っていて」非常に「少ない」と言わざるを得ません。
 コンピュータが常識を自ら獲得するには、自分にとってのその「意味」を適切に扱える必要があると思われますが、それは生物でないコンピュータがとても苦手とすることです。
 人間のような高度な知性を獲得するためには、まだやってみていないことについて、それをする前に頭の中で「シミュレーション」できることが重要であることも知られています。ここには単に過去の経験から取るべき行動を予測すること(これを強化学習といいます)とは大きな差があります。現代のコンピュータは、与えられた設定条件で精密なシミュレーションをすることは得意ですが、自分がするべきシミュレーションを自分で設定することはできません。
 「人間らしい知能」を実現したいなら、感情をはじめとする、人間の「心理」を再現するさまざまな仕組みも解き明かす必要があります。実は生の人間の思考は不完全で、とても論理的・理性的とはいえないことがいろいろな実験からわかっています(ただしある程度合理的な理由はあります。つまり「そうなっているとこれまで生き延びてくるのに有利であった」ということです)。それは進化の過程でヒトのDNAに組み込まれた「設計(デザイン)」で、コンピュータの設計には組み込まれていないものです。コンピュータが「人間」に近づきたいのであれば、そのギャップを乗り越える必要があります。

2. 鍵となる課題は何ですか?

 推論の仕組みとシミュレーションの仕組みは、おそらく共通している部分が多いか、同じ原理で実現されているでしょう。いずれにせよ、シミュレーションや推論を行うには、自分の体の外に存在するいろいろなこと・ものを頭の中に 表現する必要があります。これを心理学や哲学の言葉で「表象」とよびます。(「表象」については参考文献の1.と4.に詳しい説明があります。) 言語には「文法」といった重要な要素もありますが、そもそも「表象」する能力がなければなにもできません(言葉あるいは単語とは表象の道具です)。
 紀元前よりも古くからある推論についての数学的研究に「論理学」があり、その重要な要素の一つに「否定(「〜でない」)」があります。一方で、数学とは離れた「生物にとっての意味」についての研究の流れからも、頭の中でのシミュレーションを可能にする表象には、この「否定」を表現できることが必須であることがわかっています。
 ここまで取り上げなかった人間の重要な能力として「記憶」があります。記憶は前述のすべてのキーワードの土台になるものです。人の脳つまり記憶が「否定」をどのように表象しているのかを解明することは、それを使ってどのように推論やシミュレーションを行っているのかということと同じかそれ以上に、鍵となる課題と思われます。

3. 課題を解決できる目処はたっているのですか?

 ここ数年で盛んに研究され、話題になっているディープラーニング・ディープニューラルネットワークは、いままで人がコンピュータに与えてきた「問題の適切な表象の仕方」を、コンピュータ自身が与えられたデータから獲得する、それも人に与えられていたものよりもずっとよいものを単純な数値計算(主に足し算と掛け算)の組み合わせとして獲得することを可能にする技術です。今はまだ認識・分類に関する技術で効果が確認されている段階ですが、この研究を発展させることで、予測、学習、推論と知能の階段をさらに上へと昇っていける可能性があります。
 また、人の言葉(記号)の意味をコンピュータに処理させる場合も、従来は、人が用意したコンピュータ用の限られた数の記号を使って「記号を記号で表象」していたのですが、近年は記号を数値の集合(ベクトル)で表象する方法で大きな発展が見られ、今まではほとんど別々に分かれてしまっていた「言葉」と「画像(センサー情報)」を繋ぐ技術の展望が開けてきています。これにより、コンピュータが自分自身の五感体験(つまりセンサー情報)から常識、さらには言語を獲得できるようになるかもしれません。
 ただし、「人間レベルの知能」の実現には、まだまだ年月がかかるでしょう。

Q. 産業応用に向けた人工知能の課題は何ですか?

A. 弱いAIで解決できる問題の発見と、人工知能と共存できる社会ルールづくりが課題です。

1. なにが産業応用できているのですか?

 人工知能の研究によって生み出された技術は、さまざまな産業に応用されています。たとえば、 センサーによる地図の作成と自己位置の推定技術は自動掃除機に、 複数センサーによる周囲の環境や人の検出技術は自動運転車に、 過去の時系列情報から未来の値を予測する技術は株式の自動トレーダに、 音声認識技術や音声合成技術はスマートフォンの音声エージェントに、 自然言語処理や言語対話技術は自動受付システムやカスタマーサポートに応用されています。

2. 今後、どのような産業応用があるのですか?

 前述のように、人間の知能は完全ではなくいろいろなミスを起こします。交通事故もその現れの一つです。
 一方で、例外的なことが起きた時の判断や対応をすることは、限られた課題に対処するように作られた「弱いAI」にはとても難しいことです。完全な自動運転が実現すれば、車での移動に運転が必要なくなる可能性がありますが、単なる人の代替ではなく、人の欠点を埋め合わせて共同でよりよい成果をだす「パートナー」としての応用も期待されます。たとえば、車線変更を自動でする代わりに、車線変更できるかどうかの安全確認の手助けをしてくれれば、より安心して運転ができるでしょう。
 他にも、家の中にセンサーを設置し、それらを利用して人の意図と次の行動を予測して賢く手助けしたり、音声対話で家電の操作を行うスマートホームへの応用が考えられます。私達の家の中での生活が楽になるだけでなく、高齢者や体の不自由な方のサポートが期待できます。さらに同様の技術をロボットに搭載すれば、人をサポートするパートナーとなるロボットが実現できるかもしれません。

3. 解決すべき課題は何で、いつごろまでに解決できそうですか?

 一つ目の課題は、産業応用できる問題の見極めです。 前述のように強いAIを実現するには長い年月がかかるので、その完成を待つのではなく、「弱いAI」で解決できる問題をいかに発見できるかが課題となるでしょう。 すでにこのような視点でたくさんの産業応用がされています。 たとえば、現在の音声認識技術では離れたところからの音声を認識することはまだ難しいので、正確で完璧な議事録を作成する応用はできません。一方で、口元にあるマイクからある程度決まった内容の発言なら高精度で認識できるので、スマートフォンによる音声検索や音声による家電操作への応用はすでに実現されています。 他にも、インターネットで品物を購入すると、次に購入したくなるような商品がおすすめされたり関連した広告が表示されたりしますが、これらも人工知能研究による購買行動に限定された学習や予測技術の成果です。

 二つ目の課題は、社会のルールに関する課題です。 まず、人工知能技術の多くは大量のデータを利用するので、プライバシーのリスクと利点のバランスをいかにとるかが課題です。たとえば、自分にあったおすすめを教えてくれるので自分の購買履歴を渡す利点はあるものの、それが流出するリスクもあります。現在は、勝手にプライバシー情報を収集せず、また、収集したら適切に管理するように個人情報保護法などによる規制が行われています。しかし必要以上に規制が強くなりすぎると、技術的には可能でも、実際には実現できなくなってしまいます。

 次に、人工知能の判断の責任も課題となります。 人の運転で判断を誤って事故を起こした場合の責任は運転手にありますが、自動運転車が判断を誤って事故を起こした場合の責任は車の利用者にあるでしょうか?あるいは車メーカーでしょうか?また、どんな誤判断でも車メーカーの責任でしょうか?あるいは誤りに対して十分な対策を行っていれば責任はないのでしょうか? 「弱いAI」の判断は人が思いもよらない誤りをすることがあるので、その成果を活用するためにはこのような誤りによって生じた事態の責任範囲に関するルールも必要になります。

 これらの課題は相互に関連しており、私達の社会にとって新しい問題なので、すべてを一度に解決することは現実的ではありません。新たな応用を行い、そこで起こる問題をひとつずつ議論しながら解決策を見つけていく必要があるでしょう。

Q. 人工知能が産業応用されると、人間の仕事は減るのですか?

A. 無くなる仕事もありますが、新たな仕事も生み出されるでしょう。


 発明は「手間」を減らすものですから、なにかが発明されれば仕事は減ります。少し昔には手書きの書類を清書するという職業がありましたが、ワープロやパソコンが普及することでほとんどなくなりました。同じように人工知能が普及することで需要が減る職業もあるでしょう。
 しかしながら、有史以来世界の人口は加速度的に増え続け、発明も次々になされているにもかかわらず、仕事が金やダイヤのように希少になったりはしていません。社会が発展すれば、仕事は新たに生みだされるからです。発明も、特定の仕事を減らす一方で、社会を発展させることで別の仕事を生み出します。
 社会を維持するには人々に仕事が必要です。必要は発明の母、というように、仕事が減れば、新たな仕事も生まれるでしょう。ただし、あまりに急激な変化が起こる場合には、自然に仕事が増えるのを待つだけではなく、皆で仕事の分け合い方を考える必要もでてくるかもしれません。

参考文献

 ここで紹介する文献は、いずれも専門書ではなく啓蒙書です。高校生・大学生であれば、細かいところはさておいても、大筋は理解できるでしょう。


1. 松尾豊 著「人工知能は人間を超えるか」,角川,2015
 人工知能の第一線の研究者によって、ディープラーニングについての解説を中心に、人工知能の過去の歴史やこれからの未来についてわかりやすく描かれている。


2. ジェフ・ホーキンス 著「考える脳、考えるコンピューター」,ランダムハウス講談社,2005
 やや古い本になるが、「知能の本質は予測である」という仮説を中心に、脳の動作原理について著者の理論が平易にまとめられている。著名なコンピュータ・エンジニアによるものであるが、それまでの人工知能研究に批判的な視点で書かれている。


3. ゲアリー・マーカス 著「脳はあり合わせの材料から生まれた」,早川書房,2009
 人間の思考・脳の癖や欠陥について、誰でも簡単に試せるような様々な心理実験事例をもとに解説している。どちらも生物進化を踏まえた脳のデザインについて書かれているにもかかわらず、ジェフ・ホーキンスの著作がどちらかといえば「脳の原理は単純明快」という視点で書かれているのに対し、こちらは「脳は進化の積み重ねの結果の複雑怪奇な妥協の産物」という視点で書かれている。


4. 戸田山和久 著「哲学入門」,ちくま新書,2014
 哲学入門というタイトルであるが、「情報」という即物的なものから、我々が「意味」とよぶ精神的なものがどのように現れてくるのかについての、生物進化に基づく科学的論考をまとめた書。くだけた文体で書かれているが、内容はとても濃い。シャノンの情報理論から出発して、生物が環境から得た情報をもとに体内に生成する表象との関係性を示し、単純な生物と人間の知能の違いを表象の違いとする哲学理論を解説している。その議論をもとに、自由や道徳、人生の意味について著者の考えが述べられている。